1994年「宇宙樹」S.T.5 斎藤忠光コンサート

斎藤忠光コンサート　「宇宙樹」主旨書

"S.T.5 The Cosmic Tree 宇宙樹" 　はるかな中心から生命力あふれる未来の中心へ

　天と地を結合し、地下から養分を吸収し空間に広がる樹木は、昔から世界、宇宙の中心を意味します。生命、想像性の中心でした。中心と言うことばが、全存在の根源であり、始まりであることを想起すれば、中心を見失い、混迷、迷走しがちな現代社会に生きるわれわれにとって、世界各国に現存する聖なる樹木は、現代と未来に輝く光です。
　現代は、人類史上、経験したことのない事柄の真っ只中にいます。先に向かおうとすると様々な問題群の中で溺れてしまいそうです。しかし、希望はあります。一見弱そうにみえる現代人の生命は、一挙に解決してしまうほどの肉体的、精神的エネルギーが人々の中に生まれる機会があることを感じはじめています。個性を生かし、全体的課題には共同で取り組み、新しい時代をつくる生命の芽がふきでる時を待って生きている人々が大勢います。一人一人の生命に起こっている真の要求を理解できるかできないかが、個人にとっても世界にとっても重要なことになってきました。
　生命の働きに意識が生まれ、意識だけが突出して生命と意識が分離し、多くの人々から豊かな想像性の芽を摘み取りました。斎藤忠光氏の肉体は、人、自然と同様に反応、一体化し身体の奥深い中心と溶け合いながら互いに変化、成長していくという生命のはたらきがあります。生命と意識の境界は徐々に解消され、生命と意識が融合したこれからの時代の新しい生命、意識が育成されます。これらの生命過程をピアノあるいはシンセサイザー等で演奏します。
　激変の時代、前進し、解決するスピードはいまだに遅い。利己主義、没個性の中で自由、真理を見失った理性と錆び付いた感覚の中にいては先が見えないのです。しかし、自然、世界の中心からエネルギーが噴き出しています。このエネルギーが各自の生命の中心に反応していることを自覚するなら、人類史始まって以来の未来を開く大きな機会が、個人、政治、ビジネス等あらゆるところに存在することが理解できます。新しい想像性が芽生えるとともに理性、感受性に光が灯ります。想像性なくして創造はありえないのです。
　今回、誰の生命にも起こり始めている人類共通の前記の新しい可能性を大勢の人々と経験、意識化され、今日、明日からの確かなエネルギーになりますことを願い企画されました。そして、人種、宗教、思想、信条を超えてわれわれの子孫が生きられる地球、社会環境の一刻も早い実現をめざすこと切望いたします。演奏は、1994年9月11日（日）日本武道館にて、斎藤忠光氏のピアノ、シンセサイザーによる独奏で行われます。
　当実行委員会は準備期間中「宇宙樹　はるかな中心から生命力あふれる未来の中心へ」を可能な限り全国、全世界へメッセージとして発信し、更に全国、全世界からメッセージを受信し、全世界共通の経験を喚起したいと考えます。

国連環境計画（UNEP）事務局長、エリザベス･ダズウェル氏からのメッセージ

　人間と木は生命が引き継ぐ同じ遺産の一部となっています。非常にはっきりとしていながら、互いに複雑に絡みあった人間と木の関係は、互いに他を補足し合い、育て合い、恩恵を施し合っている、全創造物それ自体の持つ微妙なバランスを具体的に表しています。
　ガウタマ・ブッダは森を「生きていくために必要な物は何も要求せず、自らの生命活動の所産を惜しみなく差し延ベ、全存在を保護し、自らを倒そうとする木こりにさえ日陰を提供したりする、限りなく優しく情け深い、特異な有機体である」と定義づけています。
　例えば汚染された川、荒らされた山、不健全な大気等の、私たちがいわゆる技術的進歩の残した遺産を見直すにあたり、字宙樹が意味するところのものは、まさに当を得ているように思えます。宇宙樹は、全ての存在がお互いにつながっていること、即ち本質的には一つであることを象徴しています。すなわち我々人間が、自然との良い関係をもう一度確立し、自然が育まれるよう、真剣に取り組むことが必要であるように思われます。
　私たちは、全ての存在が一つにつながっていることを具体的に示す必要があります。そして、この行動は地球規模、地域的、かつ国家的レベルの全てにおいて担われた時のみ意味のあるものとなります。私は敢えて、一つ一つの家族、家庭も含め、この地球環境を高めていく努力をするべきだと思います。
　平和、発展、環境が極めて密接につながっており、一つの実在の一部として認識されつつある今日では、「S.T.5宇宙樹」コンサートが企画、運営されることは、更に意義深いものがあります。私はまた、このコンサートを運営する人たちが、子供たちが平和に生きて行ける新しい地球環境を作っていくという目標を共にしていることに大いなる喜びをもって注目致します。
　この場をお借りしまして、運営なさる皆様と参加の方々にご成功をお祈り申し上げます。そしてまた、国連環境計画は皆様方の崇高な試みを全面的に支援いたしますことを改めて申し上げたいと思います。